高校野球と平和


 第104回全国高等学校野球選手権大会は、春夏通じて初めて、深紅の大優勝旗が白河の関を超えて、宮城県の仙台育英高校に授与されました。甲子園という全国の高校球児の憧れの舞台で、栄冠を手にされた球児の皆さんは基より、監督、関係者、ご父兄の皆さんおめでとうございます。栃木県の代表、国学院栃木高等学校は、惜しくも3回戦で敗れましたが、優勝候補の智辯和歌山を破るなど、はつらつとしたプレーを見せていただきました。関係者の皆さんお疲れさまでした。

優勝した仙台育英の須江監督は、「入学どころか、おそらく中学校の卒業式もちゃんとできなくて、高校生活はなんというか、僕たち大人が過ごしてきた高校生活と全く違うんですが、青春ってやっぱり密なので、全部ダメだ、ダメだと言われて、活動していてもどこかで止まってしまうような苦しいなかで、諦めないでやってくれた。でもそれをさせてくれたのは僕たちだけじゃなくて、全国の高校生のみんなが、よくやってくれた。例えば今日の下関国際や、大阪桐蔭とか、目標になるチームがあったから、どんな時でも諦めないで、暗い中でも走っていけた。すべての高校生の努力の賜物で、僕たちが最後にここに立ったというだけなので、ぜひ全国の高校生に拍手してもらえたらなと思います」と述べられ、須江監督のチームに対する思いや、全国の共に闘った高校球児に対する労いの言葉が、刻まれた心温まるインタビューでした。今回の大会は、猛暑の中で行われ、選手や応援団、そして審判団に至るまで今後の運営をどうしていくのか課題の残る大会でもありました。しかし、こうして無事に大会が終了したことは、この日本という国が平和であるということを、忘れてはなりません。

 わたしたち連合は結成以来、世の中が平和であることを願い、様々な取り組みを進めています。私たちが安心して暮らし、働いていくためには、「社会が平和で安定していること」が大前提です。連合は毎年6月から9月にかけ、みんなで平和について考える取り組みを行っています。6月には、戦時中3ヵ月におよぶ地上戦が繰り広げられた沖縄で、8月には人類史上はじめて核兵器が人間に対して落とされた広島と長崎で、9月には戦争降伏後の侵攻で不法に占領され、今なお解決していない北方領土問題を北海道・根室で、毎年4つの地から平和であり続けることの大切さを訴えています。そして、戦争の爪痕は、この4ヵ所だけではありません。私たちの地元栃木県でも、宇都宮空襲などがあり、多くの犠牲を出しました。77年前、広島と長崎に原子爆弾が投下され、多くの尊い命が奪われました。今なお、後遺症や大切な人を失った苦しみを抱えている人がたくさんいます。それでも、今この瞬間にも、世界中には13,000を超える核弾頭が存在しています。一瞬で、人の命が、日常が、大切なものが奪われる、あのような悲劇を繰り返してはいけません。非人道的兵器である核兵器の、広島・長崎につづく3度目の使用を断じて許してはなりません。

昨年の1月22日、核兵器は必要ないと訴える世界中の仲間の思いが結集し、核兵器の保有、開発、使用などを禁止する「核兵器禁止条約」が発効しました。しかし、残念ながら日本政府は「国際社会の分断を深める」として、この条約を未だ批准していません。連合は、日本政府には唯一の被爆国としての役割と責任を果たすため、本条約の早期批准を強く求めます。

今日24日は、ロシアがウクライナ侵攻を始めて6か月となりました。ウクライナの民間人を含めた犠牲者は、9,000人を超えたと報道がありました。そして、核戦争のリスクが高まっています。連合は、引き続き核兵器反対、世界の恒久平和を求めていくとともに、一日も早い核兵器のない明るい社会の実現を目指して、率先して運動を展開してまいります。