11月5日、宇都宮市文化会館に於いて、『安心社会へ 新たなチャレンジ~すべての働く仲間とともに「必ずそばにいる存在」へ~』をスローガンに、連合栃木第17回定期大会を開催し、2021年度一般活動報告の確認、2022~2023年度運動方針、新体制について議案審議を行いすべての議案が可決されました。参加いただきました代議員、傍聴の皆様に感謝申し上げます。また、今期で退任された役員の皆様には、連合栃木の労働運動に多大なご尽力を賜りました。心から敬意と感謝を申し上げます。
さて、16期の2年間を振り返ってみると、スタートの3か月こそ感染症の影響はなかったものの概ね、コロナウイルス感染症対応に振り回された2年間でした。私たちの働き方、労働運動そのものにも大きな変化をもたらしました。そのような中で第49回衆議院議員選挙が行われ、第2次岸田内閣が始動しました。政府は、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした新しい資本主義を実現していくため、内閣に新しい資本主義実現本部を設置しました。この会議には、連合芳野会長もメンバーとして参加していますが、この会議の考え方として、①現在、世界各国において、持続可能性や「人」を重視し、新たな投資や成長につなげる、新しい資本主義の構築を目指す動きが進んでおり、我が国がこの動きを先導することを目指す。②成長と分配を同時に実現するためには、幼児教育・保育や小中学校から企業内まで、「人」への投資を強化する必要がある。多様性と包摂性を尊重し、女性や若者、非正規の方、地方を含めて、国民全員が参加・活躍できる社会を創り、一人一人が付加価値を生み出す環境を整備する必要がある。③成長戦略によって生産性を向上させ、その果実を働く人に賃金の形で分配することで、広く国民の所得水準を伸ばし、次の成長を実現していく。としていますが、「新しい資本主義は実現するか」というテーマで京大名誉教授 佐伯啓思氏がコラムを書かれていますので紹介します。
『市場競争中心の新自由主義は見直され、社会に広がる格差に焦点が合わされるようになった。既に潜在的に広がった格差をこの2年間のコロナがあぶり出したのも事実である。経済がそれなりに成長しているときには視界から遠ざけられてしまう格差は、一国の中においても、また国家間においても、思いのほか大きかったということである。先進国は、「競争と成長」から「分配から安定」へと移動しつつある。この世界的な潮流は、日本にも押し寄せている。そこで、岸田内閣として取り組む「新しい資本主義」ということであるが、ほぼゼロ成長が続く日本で、「競争」による成長ではなく「分配」による成長で、本当にうまくいくのか不安である。これまでグローバル市場競争による成長という新自由主義であったことを想えば、大きな転換といえよう。しかし、そもそも、グローバル市場競争が格差を生むことは判り切ったことで、この方向転換はむしろ遅きに失したと言えよう。グローバル競争は、世界中を厳しいコスト競争に陥れ、企業は、海外展開を模索し、労働節約的イノベーションに頼ったことにより、勤労者の所得を低下させ、消費の拡張にはつながらずデフレ圧力にさらされたのである。問題の焦点は、「競争による成長」か「分配による成長」かではなく、グローバリズムやイノベーションによって可能となる経済成長がそのまま社会の進歩である。という今日われわれを支配している価値観そのものを見直すことが必要になる。』と提言しています。
労働組合の原点は職場にあります。連合創設の合言葉として「顔合わせ、心合わせ、力合わせ」を謳い、労働戦線統一を成し遂げました。私は、時代の流れが大きく変わろうとしていく中でも労働組合の基本的な信念は決して変えるべきではないと思います。古臭いと思われているようなことが実際的に最も大切な存在であることに気が付かなければならないのではないでしょうか。