労働協約の地域的拡張適用について

9月21日、中秋の名月は、ご覧になられたでしょうか。天候に恵まれ8年ぶりに満月と重なり、綺麗な月が見られました。お月見というと子供のころから、ススキを飾り団子をお供えしました。お月見にお供えものをするのは、月が風雅の対象だけでなく、信仰の対象でもあったからだそうです。穀物の収穫に感謝し、米を粉にして丸めて作ったのが月見団子の始まりで、ススキは神様の依り代と考えられており、稲穂が実る前なので、稲穂に見立てたススキが選ばれたといわれています。また、ススキの鋭い切り口が魔除けになるとされ、お月見のあと軒先に吊るしておく風習もあるようです。

さて、労働組合法第18条、「―の地域に於いて従業する同種の労働者の大部分が、―の労働協約の適用を受けるに至った時は、当該労働協約の双方または一方の申し立てに基づき、労働委員会の決議により、厚生労働大臣または、都道府県知事は、当該地域に於いて従業する他の同種の労働者及びその使用者も当該労働協約の適用を受けるべきことの決定をすることが出来る。」とあります。

ある会社の労働組合が会社と交渉して決めた労働条件が、同じ地域の同じような会社すべてに一律で適用される。労働協約の「地域的拡張適用」といわれる決定が22日、厚生労働省から下されました。茨城県内の大型家電量販店は、正社員の年間休日数を最低でも111日にしなければなりません。地域的拡張適用の決定は約30年ぶりになります。拡張適用になるのは、家電量販のヤマダ電機(現ヤマダホールディングス、群馬県高崎市)、ケーズホールディングス(水戸市)、デンコードー(宮城県名取市)と、3社の労組が2020年4月に結んだ労働協約。正社員の年間の所定休日数を最低111日としています。3社の労組(UAゼンセン加盟)の申し立てを受けた中央労働委員会が8月に承認。9月22日に厚労相名で決定しました。適用先は、茨城県内にあって(1)大規模小売店舗立地法の対象(2)少なくともエアコン・冷蔵庫・洗濯機を販売(3)面積が一定以上ある、といった条件にあてはまる店で、管理職以外の正社員が対象になります。総合スーパーやホームセンターは含みません。期間は22年4月1日から23年5月31日まで。労働協約は労組と会社が話し合って決めたもので、就業規則や個別の労働契約で協約の水準を下回る労働条件を定めても無効になります。対象は原則、協約を結んだ労組の組合員ですが、拡張適用されるとそれ以外の労働者にも広がります。関係者によると、茨城県内にはすでに協約の対象になっている店が約50店あり正社員は約600人。それ以外は2社5店で正社員は約60人。茨城県全体の9割にすでに同じ協約が適用されているとして、拡張が認められました。

連合の受け止めとして、今般の決定は、個別労使が締結した労働協約が、協約当事者のみならず、未組織労働者の労働条件の維持・向上にも影響を及ぼすことを示すものであり、労働者間、使用者間における公正な競争条件の整備にも資するものである。管轄の労働基準監督署においては、「協約」の遵守に向けて、本件にかかる相談対応および監督指導の徹底が求められる。連合は、集団的労使関係の成果をより多くの働く仲間に波及させるべく、組織拡大に向けた不断の努力とともに、構成組織等と連携して労働協約の地域的拡張適用に、全力で取り組む。と談話で発表しています。

今回のこの事案は、UAゼンセンの指導の下に隣県である茨城県での対応となりましたが、栃木県にも同様の量販店がありますので、UAゼンセン栃木県支部とも連携し注視してまいります。今、コロナ禍で現状の不安は基より、正規、非正規問わず将来不安が広がっている中で、私も栃木県労働委員会の一員として、この事案を受け止めてすべての働く皆様の安心につながり得る運動を、しっかり取り組んでまいります。